ほくろ除去
盛り上がったほくろは除去できるのか──見えている高さと同じだけ、皮膚の下にもある
はじめに ― 平らなほくろとは、別のものとして考えたほうがいい
顔や首にある、ぷっくりと盛り上がったほくろ。触れると柔らかく、真ん中から毛が生えていることもあります。平らなシミのようなほくろと違って立体的なので、光の当たり方で影ができ、実際の大きさより目立って見えることがあります。
こうしたほくろについて「これは取れるのでしょうか」というご相談をよくいただきます。平らなものは取れても、盛り上がった大きいものは手術しかないと言われた、という方もいらっしゃいます。
結論から申し上げると、盛り上がったほくろもレーザーで扱えることが多いのです。ただし、平らなものとは考え方がまったく違います。理由は、見えている高さと同じくらいの厚みが、皮膚の下にも隠れているからです。
この記事では、ほくろが盛り上がる仕組み、深さがあることによる難しさ、そして「盛り上がってきた」という変化そのものが受診の理由になる場合について説明します。

1. なぜ盛り上がるのか──細胞がどこにいるかで、形が決まります
ほくろは専門用語で色素性母斑と呼ばれ、メラニン色素をつくる細胞に似た母斑細胞が皮膚に集まった状態です。この細胞が皮膚のどの深さに、どれだけ集まっているかによって、平らに見えるか、盛り上がって見えるかが決まります。
表皮と真皮の境目あたりに留まっていれば、シミのように平らに見えます。真皮の中まで細胞が広がると、その厚みのぶんだけ皮膚が押し上げられ、立体的になります。
現在、国際的に用いられている後天性の色素性母斑の分類では、盛り上がるタイプとして次の2つがよく挙げられます。
- 顔面や頭部にできるタイプ:ドーム状から半球状に盛り上がり、複数の毛が通っていることが多いものです。小児期には平坦で、青年期にかけて次第に隆起し、成人期に半球状として完成します。その後は加齢とともにメラニン色素が減り、全体に色が抜けていくことがあります。
- 腕や首にできるタイプ:淡い褐色から肌色に近いことが多く、茎があるようにふにゃっと柔らかく隆起します。表面は顆粒状か、なめらかです。
つまり、「昔は平らだったのに、だんだん盛り上がってきた」という経過そのものは、珍しいことではありません。ただし、後述するように例外もあります。
2. 見えている高さと同じだけ、皮膚の下にも入っています
ここが、盛り上がったほくろを扱ううえで最も大切な点です。
皮膚の表面から盛り上がっている分と、ほぼ同じだけの組織が、皮膚の下にも入り込んでいます。氷山のようなものだとお考えください。したがって、見えている部分を平らにするだけでは終わりませんし、逆にすべてを一度に取り切ろうとすると、その深さのぶんだけ組織が失われ、深いへこみが残ります。
そのため、盛り上がったほくろのレーザー治療では次のことが起こりえます。
- 1回で取り切れない場合があります。その場合は複数回に分けて照射します
- 深さのぶんだけ、へこみが残る可能性があります
大きく隆起したほくろでは、経過が長くなることがあります。どこまで一度に処理するかは、部位や大きさ、皮膚の状態を見たうえで判断させていただきます。
なお、皮膚には再生する力があり、いったんへこんでも時間の経過とともに自然に盛り上がってくることもよくあります。ただし、これも個人差があり、確実ではありません。
★ もう一点、知っておいていただきたいことがあります。不完全に除去されたほくろが再び現れた場合、その組織は顕微鏡で見たときに、悪性のものと紛らわしい像を示すことがありますが、ほくろがガン化することはありません。

3. 盛り上がったほくろでは、レーザーの選び方が変わります
レーザーは、波長によって皮膚の中の「何に」反応するかが変わります。
- 波長10,600nmの炭酸ガスレーザーは、皮膚の中の水分に反応して熱に変わります。組織を少しずつ削っていく働き方をします
- 波長810nmのダイオードレーザーは、メラニンに反応して熱に変わります。ほくろの組織そのものを収縮させる働きがあります
当院では、ほくろの治療にダイオードレーザーとアレックスレーザーを用いています。照射した瞬間にほくろが縮み、かさぶた状になるため、テープによる保護を必要としないことが多く、麻酔も原則として使用していません(目のまわりや、痛みに敏感な方には麻酔を行います)。炭酸ガスレーザーよりも適していると思います。
ただし、どのレーザーを使ってもへこみは生じえますし、回数がかかる場合もあります。盛り上がりが大きいほど、その傾向は強くなります。「盛り上がったほくろ除去は難しく、技術を要する」という前提は変わりません。
4. 「盛り上がってきた」が、受診の理由になる場合があります
ほくろに似た悪性の変化を疑う目安として、ABCDEルールが知られています。このEは隆起(Evolving)、つまり盛り上がってきたことを指します。
もちろん、第1章で述べたとおり、年齢とともに盛り上がってくること自体はよくあることです。問題は、それが通常の経過なのか、別のものなのかを、見た目だけでは区別できないという点にあります。
当院では、ダーモスコピーという特殊な拡大鏡で確認したうえで治療方針を決めています。ダーモスコピーを用いた診察は、肉眼だけで判断する場合と比べて診断の精度が上がることが、複数の研究をまとめた検討で報告されています。
盛り上がった病変を見るとき、当院が確認しているのは次のような点です。
- 毛穴が見えるかどうか。盛り上がったほくろでは毛穴がはっきり見えることが多く、規則的に配置されているかどうかの手がかりになります
- メラニンの集まり方
- 潰瘍(へこんだ部分)があるかどうか
- 特殊な血管の見え方
後ろの3つは、基底細胞癌という皮膚がんを疑うときの手がかりとして知られているものです。実際に、盛り上がったほくろだと思い込んで長く放置されていた病変が、診察の結果それではなかったというケースもありました。レーザー治療が適さない場合があるため、この確認を省くことはできません。
実例
盛り上がったほくろの実例写真です。
診断内容の詳細は、隆起したほくろに関するほくろ除去のページをご覧ください。
① 大きく盛り上がったほくろと間違えやすい症例(基底細胞癌だった例)

盛り上がったほくろだと思い込み、何年も放置されていた方です。上半分を大きな黒い塊が占め、その下がへこんでいます(典型的な潰瘍)。毛穴がはっきり見えない点も含め、切除する前にほぼ診断は確定できました。
- 当院で行ったこと:ダーモスコピーによる診察と診断まで。この部位の手術は難しく、専門の病院で除去していただきました。病理診断も基底細胞癌でした
- 費用:この症例に、当院での治療費用は発生していません
- ★ 悪性が疑われる病変に、レーザー治療は行いません。手術で切除し、病理検査で確認します
- 診断・経過には個人差があります。
② 本物の隆起したほくろ(毛穴がはっきり見えます)

①と見比べてください。隆起したほくろでは、このようにはっきりと毛穴が見られます。一見して、規則的であるかどうかが分かります。
- 治療内容:ダイオードレーザー/アレックスレーザーによる、左の小鼻の隆起したほくろの除去。保険適用外の自由診療です
- 費用:49,500円(税込み)
- 主なリスク・副作用:浮腫、発赤、くぼみ、色素脱出、肥厚性瘢痕 など
- 効果・経過には個人差があります。
おわりに ― 深さを見込んだうえで、進め方を決める
要点を整理します。
- ほくろが盛り上がるのは、母斑細胞が真皮の中まで広がっているからです。年齢とともに隆起してくること自体は珍しくありません
- 見えている高さと同じだけ、皮膚の下にも組織があります。深さのぶんだけへこみが残る可能性があり、1回で取り切れない場合は複数回に分けて照射します
- 使用するレーザーによって、反応する対象(水分かメラニンか)が異なります
- 「盛り上がってきた」という変化は、受診の理由になります。見た目だけで判断せず、ダーモスコピーで確認したうえで方針を決めます
なお、ほくろ除去についてはご予約を受け付けておりません。ご都合のよい日にご来院ください。診察したその日に施術を行うことも可能です。

よくあるご質問
盛り上がったほくろは、手術でないと取れないのでしょうか。
レーザーで扱えることが多いです。当院では、大きく隆起したほくろにもレーザーで対応してきました。ただし、悪性が疑われる場合はレーザー治療を行いません。その場合は手術で切除し、病理検査で確認します。
1回で平らになりますか。
1回で取り切れない場合があります。とくに大きく隆起しているものでは、複数回に分けて進めることがあります。次の照射までは1か月ほど間隔をあけていただきます。無理はしません。
取ったあとにへこみますか。
へこみが生じる可能性があります。盛り上がっている分だけ深さもあるため、平らなほくろより起きやすい傾向があります。へこみのリスクがまったくないレーザー治療は存在しません。時間の経過とともに自然に盛り上がってくることも多いのですが、個人差があります。
昔から少しずつ盛り上がってきたのですが、大丈夫でしょうか。
年齢とともに隆起してくること自体は珍しくありません。ただし、見た目だけで判断はできませんので、気になる変化があれば一度ご相談ください。
治療の概要(自由診療)
- 治療内容:ダイオードレーザー/アレックスレーザーの熱によって、ほくろの組織を変性・壊死させます。保険適用外の自由診療です
- 費用:1mmあたり6,600円〜(税込み)。口唇は11,000円〜(税込み)。色調・深さ・部位・隆起の度合いによって変わります。最新の料金は料金案内のページをご確認ください
- 主なリスク・副作用:赤み(数年残る場合があります)、へこみ、むくみ、色素沈着(1年以上続く場合があります)、色素脱失(白色瘢痕)、肥厚性瘢痕、水疱、にじむような出血、眉やひげの中では毛が生えなくなる可能性があります
- 効果には個人差があります。完全に元の皮膚に戻るわけではありません
- お問い合わせ:大山皮膚科 電話 03-3880-0776
※本コラムは医学的情報の提供を目的としたものであり、個別の診断・治療を代替するものではありません。気になる症状がある方は医療機関にご相談ください。
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記事監修者
大山 克巳大山皮膚科 院長
日本皮膚科学会認定専門医/慶応大学皮膚科開業医会会員
- 1980年 慶應義塾大学皮膚科研修医
- 1984年 慶應義塾大学皮膚科助手
- 1987年 慶應義塾大学皮膚科退職
- 1987年 大山皮膚科 院長
参考文献
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